[マルクト] マルクト : 魔術研究会社。

[マルクト] マルクト : 独自なアプローチで魔術やサーヴァントについて研究しているとある社。

[マルクト] マルクト : そこの一室で、大事そうにメモ帳を抱える彼女が飛び跳ねていた。

[マルクト] マルクト : 彼女の近くのテーブルには、一つ。

[マルクト] マルクト : 質素な部屋には似合わないものが置かれていた。
それはぼろぼろになった店のポスターのようで。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] マルクト : 「……ふふ!」

[マルクト] マルクト : 「やったぁ~~!!かの有名な聖杯戦争!
それに参加するための……触媒!」

[マルクト] マルクト : ちらりとそのポスターを見る。

[マルクト] マルクト : 「……他の人たちには内緒です、やっと手に入れちゃいました!」

[マルクト] マルクト : そのことが嬉しいのか飛び跳ねている。

[マルクト] マルクト : ……疲れたのか、ぜえぜえと息を切らす。

[マルクト] マルクト : 「……」

[マルクト] マルクト : 「これを使い、私が参加すれば……」

[マルクト] マルクト : 「……きっと、皆さんも私の技術を認めてくれるはずです」

[マルクト] マルクト : ……そのためには……私は…

[マルクト] マルクト : …頑張らないと…

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト : コントロール、コントロール。

[マルクト] マルクト : ……管理しなくては、落ち着かせなくては。

[マルクト] マルクト : 「……はぁ、はぁ…」

[マルクト] マルクト : ……セイバーの陣営。

[マルクト] マルクト : あれがどうなったのかの末路を、見てしまった。

[マルクト] マルクト : ”不幸”にも、たまたま出くわしてしまっただけなのに。
運が悪かった、いや……

[マルクト] マルクト : 命さえもリソースにしてしまう、それが戦争と言われる所以なのだと。
…知ってしまった。

[マルクト] : 「…だいじょーぶ?」

[マルクト] : 部屋の隅から、声が聞こえる。

[マルクト] マルクト : 「……ええ、大丈夫ですよ。…アーチャー」

[マルクト] : 「…それならよかった、でもよーく聞いてね!」

[マルクト] : 「偉業をなす人っていうのは、1人だけがどうにかするんじゃないの!」

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] マルクト : 「ですが…私はこの戦争を勝ち取るために一人で成すことが意味があるのだと……」

[マルクト] マルクト : そうだ、私は…この戦争に勝ち取り、努力を、実力を見せる必要がある!

[マルクト] : 「うん、でも…死んじゃうよ?」

[マルクト] マルクト : 「………っ」

[マルクト] マルクト : ぞわりと鳥肌が立つ。
……あの時の光景を思い出したからだ。

[マルクト] : 「まあ、死ぬまでもいかなくても…」

[マルクト] : 「勝つことだって難しいかもしれないんだしね~」

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] マルクト : …不安、そして……恐怖。
自信は掻き消えて。

[マルクト] マルクト : 「………いえ、あなたの言いたい事はわかりました」

[マルクト] マルクト : メモ帳を開く。

[マルクト] マルクト : …そこには、今回の戦争の情報を。

[マルクト] マルクト : ……こうなれば、ここの誰かと……

[マルクト] マルクト : 手を取ることが必要になりそうですね…

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト : 「はぁ……あれが、サーヴァントの戦い…!」

[マルクト] マルクト : 圧倒的な魔力のぶつかり合いを目にし、なんとか退散したが代償は大きく。

[マルクト] マルクト : 「……凄まじいものでした……が」

[マルクト] 松坂さとう : 月夜の中、1人の少女が、靴音と共に、マルクトの元へ歩む。

[マルクト] 松坂さとう : カツ、カツ、カツ、カツ。

[マルクト] 松坂さとう : そして、拍手。

[マルクト] 松坂さとう : パチ、パチ、パチ、パチ。

[マルクト] 松坂さとう : 「大健闘でしたね」

[マルクト] マルクト : その靴音、そして乾いた音に顔を上げる。

[マルクト] 松坂さとう : 「"マルクト"さん」
ニコ、と笑う。マルクトの名を知る少女。

[マルクト] マルクト : 「………あなたは」

[マルクト] マルクト : ……メモに記載されていた少女…これは。

[マルクト] 松坂さとう : 「初めまして、バーサーカー陣営……松坂さとう、という者です」
深く、会釈する。

[マルクト] マルクト : 「…初めまして。私の紹介は…必要ないでしょう」

[マルクト] 松坂さとう : そして、静かな表情で、マルクトの目を見る。

[マルクト] マルクト : その目の色は焦燥感、不安が入り混じっている。

[マルクト] 松坂さとう : 「………マルクトさん、そう怖がらないでください」

[マルクト] 松坂さとう : ニコ、と笑い。

[マルクト] マルクト : 「……見ていただけなら、わざわざここに来る必要もないでしょう」

[マルクト] 松坂さとう : 「私は何も、貴女にトドメを刺しに来たわけじゃありませんから」

[マルクト] 松坂さとう : 「ええ、もちろんです」

[マルクト] マルクト : 警戒心はあるものの、しかし話は聞くように。

[マルクト] 松坂さとう : 「"賢い"貴女でしたら、分かるんじゃないですか?」

[マルクト] 松坂さとう : 「本来であれば、ズタボロの貴女は……私の手にかかれば……ねぇ?」

[マルクト] 松坂さとう : 妖艶な笑みを浮かべる。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] 松坂さとう : そうして、手を差し伸べる。

[マルクト] 松坂さとう : 「ですが、"今は"非合理的、ですね」

[マルクト] マルクト : 「…………そういうことですか」

[マルクト] 松坂さとう : 頷く。

[マルクト] マルクト : 一人では、不安なのだ。
…だからこそ…私は動こうとしていたのではある、が。

[マルクト] 松坂さとう : 「ええ、今現在……キャスター陣営が強力です、戦況を見れば明らかでしょう、優勝は誰が見ても、時臣さんが勝つ、そうなりますよね?」

[マルクト] 松坂さとう : 淡々と、そう説明する。

[マルクト] マルクト : 「……そうですね、今は小競り合いをしている場合ではないでしょう」

[マルクト] 松坂さとう : 「……っと」

[マルクト] マルクト : そう、今は。

[マルクト] 松坂さとう : ふと、遠くを見つめる。

[マルクト] 松坂さとう : 聞こえてくる、"男の声"。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] 松坂さとう : 『やあやあやあやあやあ、魔術師諸君!!!』

[マルクト] 松坂さとう : 『小生はコレクト・センチュリーよりやって来たギム・ギンガナム!!!交渉がしたい!!!』

[マルクト] 松坂さとう : ………なるほど、これは……大変自信のあるお方、ですね。

[マルクト] マルクト : それに耳を傾ける。
……なるほど、先ほどの……

[マルクト] 松坂さとう : 今私の目の前にいる少女、マルクトさんを破った男……大火力で戦場を制圧する彼は……なるべく、敵には回したくないですね。

[マルクト] 松坂さとう : 「……おっと、話が逸れてしまいましたね」

[マルクト] 松坂さとう : 「単刀直入に申し上げましょう」

[マルクト] 松坂さとう : 「私と同盟を組みましょう」

[マルクト] 松坂さとう : ニッコリと、笑う。

[マルクト] マルクト : 同盟。

[マルクト] 松坂さとう : 「そして、時臣さんを潰しましょう」

[マルクト] マルクト : ごくり、と唾を飲んで。

[マルクト] 松坂さとう : 「アレは……邪魔です」

[マルクト] 松坂さとう : 赤い瞳が、満月に照らされ、妖しく光る。

[マルクト] マルクト : ……自らの力を誇示する。
それだけが…私の参加する理由だ。

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] マルクト : 「………構いません、例え数刻だとしても…あなたと手を組みましょう」

[マルクト] 松坂さとう : ニコ。

[マルクト] 松坂さとう : 「良きお返事です」

[マルクト] マルクト : ……逆に言えば。

[マルクト] マルクト : これを断ったらどうなるか。

[マルクト] マルクト : その結果が見えないほど、見通しが悪いわけではない。

[マルクト] マルクト : 「……では、あくまで同盟ということで…
不干渉でいましょう」

[マルクト] 松坂さとう : 「ええ、信頼は不要です」

[マルクト] 松坂さとう : 「利用しましょう、お互い」

[マルクト] マルクト : 「……ええ」

[マルクト] マルクト : ……悔しいけれど、立場は向こうの方が上…
なら、私は……手を取るしかない。

[マルクト] 松坂さとう : 「───では、まず私は……様子を見てきます」

[マルクト] 松坂さとう : そうして、さとうは踵を返し、闇夜へ消えて行った。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] マルクト : それを見送っていく。

[マルクト] マルクト : ……風が吹く、その風はあまりにも冷たく。

[マルクト] マルクト : ……安心できるような場所に自分は位置していないのだ。

[マルクト] マルクト : ……それが身に染みる。

[マルクト] マルクト : ならば、ならば……

[マルクト] マルクト : 私のすることを、するだけだ。

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう : 「はぁ……はぁ……」

[マルクト] 松坂さとう : 額に伝う汗を拭い、公園のベンチへ座るさとう。

[マルクト] 松坂さとう : ……なるほど、あれが彼の力……真名さえ暴けば大したことはないだろうと、高を括っておりましたが……。

[マルクト] 松坂さとう : 厄介です……このままでは、確実に……敗けます……。

[マルクト] 松坂さとう : ああ……苦い……苦い苦い苦い苦い苦い……!!

[マルクト] マルクト : そのベンチに、一本ペットボトルが置かれる。

[マルクト] 松坂さとう : 「っ……!」

[マルクト] マルクト : 大したことない、ジュースではあるが。

[マルクト] 松坂さとう : とっさに、振り返る。

[マルクト] マルクト : 「……お見事でした、防戦一方の相手を叩くとは」

[マルクト] 松坂さとう : 「………」

[マルクト] 松坂さとう : 「貴女、でしたか……」

[マルクト] マルクト : 振り返った先には、同盟相手。

[マルクト] 松坂さとう : 緊張を、落とすさとう。

[マルクト] 松坂さとう : 「……ありがとうございます……ですが……破れませんでした」

[マルクト] マルクト : 「すみません…驚かせてしまいましたか」

[マルクト] マルクト : 「………いえ、消耗はさせたはずです」

[マルクト] 松坂さとう : 「…………」

[マルクト] マルクト : 見ている限り、宝具は使用済みであり消耗したとはいえるのだろう。
しかし本気でもない様子ではあった。

[マルクト] マルクト : 「……ですが、厄介な種を残しているのは事実ですね…」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトに頷く。

[マルクト] マルクト : 先ほど休息していた時に買っておいたペットボトル。
自分の物を開き、飲みながら。

[マルクト] マルクト : 「……次は私の番です」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトから貰ったペットボトルを、一口。

[マルクト] 松坂さとう : ゴク、ゴク、と喉を鳴らし、飲み干す。

[マルクト] マルクト : 「…利用するだけの価値があると、あなたに見せましょう」

[マルクト] 松坂さとう : 「…………ええ」

[マルクト] 松坂さとう : クスリと笑う。

[マルクト] 松坂さとう : 「……貴女って、正直者、なんですね」

[マルクト] マルクト : 「……む」

[マルクト] 松坂さとう : 「これ、毒入れてたら私、殺せましたよ?」
空のペットボトルを振り回す。

[マルクト] マルクト : ぽりぽりと、頬をかいて。

[マルクト] マルクト : 「…あなたを殺すメリットもありませんでしたから」

[マルクト] 松坂さとう : ……なんでしょうねぇ……。
利用しやすいと思って接触してみたはいいですが……。

[マルクト] 松坂さとう : なんというか……ええ……。

[マルクト] 松坂さとう : 平和ボケ……というのですかね……。

[マルクト] 松坂さとう : この方が聖杯戦争で生き残る?
そんなの、出来るんですか……?この私すらも退けて、勝つ?

[マルクト] 松坂さとう : ……純粋に、興味が湧いてきましたね。

[マルクト] 松坂さとう : 「……マルクトさん」

[マルクト] マルクト : ……最も、それを飲んでくれたのもさとう自身であろう。
正直者、といわれましても…自分が魔術師らしくはないなんて、百も承知です。

[マルクト] マルクト : ……ただ、私は私の力を見せつけるために。

[マルクト] 松坂さとう : 「貴女は、この聖杯戦争に何を望んでおられるのですか?」

[マルクト] マルクト : 「はい」

[マルクト] 松坂さとう : 「確か、魔術師の系統、なのですよね?」

[マルクト] 松坂さとう : 「……なんと言いますか、貴女は……」

[マルクト] 松坂さとう : 「魔術師らしくない、ですね」

[マルクト] マルクト : その程度なら、答えても…構いませんか。

[マルクト] マルクト : 「……」

[マルクト] マルクト : 「……まあ、そうなのかもしれません」

[マルクト] マルクト : 「ですが、私はらしくないと言われても」

[マルクト] 松坂さとう : 「っ………!?」

[マルクト] 松坂さとう : 敵意の気配。

[マルクト] 松坂さとう : 「……お話は、また今度にしましょう」

[マルクト] 松坂さとう : ベンチから立ち上がり。

[マルクト] マルクト : 「………!」

[マルクト] 松坂さとう : 殺意の目を────。

[マルクト] マルクト : 「……お気をつけて」

[マルクト] マルクト : その背中に、声だけ届けて。

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] 松坂さとう : 千鳥足で、帰路を辿る。

[マルクト] 松坂さとう : 「ハァ……ハァ……」

[マルクト] マルクト : 「……肩、貸しましょうか?」

[マルクト] 松坂さとう : 「…………」

[マルクト] マルクト : その足取りを見かねて。

[マルクト] 松坂さとう : チラリと、マルクトの方を向き。

[マルクト] 松坂さとう : 「………」

[マルクト] 松坂さとう : 「……お願い、します」

[マルクト] 松坂さとう : 手を、伸ばす。

[マルクト] マルクト : 「……ええ、構いません」

[マルクト] マルクト : その手を伸ばして、掴む。

[マルクト] マルクト : そして支える様にして、先を進む。

[マルクト] マルクト : 「……1日目であるというのに…圧倒的な猛攻でした」

[マルクト] 松坂さとう : 「………ええ」

[マルクト] 松坂さとう : 「勝利とは……力で示すもの……」

[マルクト] マルクト : 私には……とても、まだ…出来そうにはない。

[マルクト] 松坂さとう : 「そうでなければ……夢というのは……」

[マルクト] 松坂さとう : 「いつの間にか……どこかえと、消え散ってしまうもの……」

[マルクト] マルクト : 「……そう、ですね……」

[マルクト] マルクト : 「…自らの夢を誇示するためには……舞台と、力が必要です」

[マルクト] マルクト : 「……そのためには絶好の機会だと、思っていたのですが…」

[マルクト] マルクト : ……先ほども攻撃はさとうに任せただけ。
こちらは少し指示を飛ばしてサポートしただけだ。

[マルクト] 松坂さとう : 「……………」

[マルクト] 松坂さとう : 「貴女には夢が無い………そういうこと、ですか」

[マルクト] マルクト : 「…………夢、ありますよ」

[マルクト] 松坂さとう : 「…………」

[マルクト] 松坂さとう : 他人の夢など、どうだっていい、そのはずだった。

[マルクト] 松坂さとう : でも、聞いてみたい。

[マルクト] 松坂さとう : 私は、彼女の、夢を。

[マルクト] 松坂さとう : 聞いてみたい。

[マルクト] マルクト : 「ただ、私の力を……もっと、他の人に見てもらって…それを認めてもらう」

[マルクト] マルクト : 「……そして私が出来るのだ、と…見せつけてやりたかったんです」

[マルクト] 松坂さとう : 「………………。」

[マルクト] 松坂さとう : 「……ええ、そうですか……」

[マルクト] マルクト : 夢、夢、夢。
他の人のように具体的でもなく、ただ果たしたい目的のために。

[マルクト] 松坂さとう : 「…………私はもう、既に貴女のこと、認めてますけどね」

[マルクト] 松坂さとう : 「おっと」

[マルクト] マルクト : 「……それは」

[マルクト] 松坂さとう : 「………これで最後です」

[マルクト] 松坂さとう : 踵を返し。

[マルクト] マルクト : 「……!」

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] マルクト : 扉のその先。

[マルクト] マルクト : ………はぁ~~~~~~~~。

[マルクト] マルクト : みんなみんな、信念が強くて……誰も彼も、輝いて見えます。

[マルクト] マルクト : それと戦うのは、勇気がいる、意志がいる。

[マルクト] マルクト : ………ああ、でも……

[マルクト] マルクト : これが『私を見せる機会』なんでしょう。

[マルクト] マルクト : なら、もう二度とないかもしれない機会。

[マルクト] アーチャー : 「浮かない顔だね~?もとい、さっきまでの話だけど!」

[マルクト] マルクト : 「…アーチャー」

[マルクト] アーチャー : フフン、と笑い。

[マルクト] アーチャー : 「…今もずっとずっと輝いてる、それこそが……」

[マルクト] アーチャー : 「偉業を成せる、偉人って言えるんじゃないかな」

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] マルクト : 「……頑張りますよ、私が私でいられるように」

[マルクト] マルクト : 「私を見せられるように」

[マルクト] マルクト : あとは、ぶつかり合うだけ。

[マルクト] マルクト : ……今日は月が輝くいい夜だった。

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう : 朝日が、昇った。

[マルクト] 松坂さとう : マルクトとの集会所へ、足を運ぶさよう。

[マルクト] 松坂さとう : 体力も、魔力も底を尽き。

[マルクト] マルクト : 目指す場から、一つの影が現れて。

[マルクト] 松坂さとう : マスターである彼女は、サーヴァントという、己を守護する存在も消滅し。
無防備の状態でいて、されど、その顔には懸念も、曇りも一つも無く。

[マルクト] マルクト : 「…よかった、ちゃんと……戻ってきてくれましたか」

[マルクト] 松坂さとう : 「……ふふ」

[マルクト] 松坂さとう : ニコ、と笑い。

[マルクト] 松坂さとう : 「おはようございます、マルクトさん」

[マルクト] マルクト : 「はい、おはようございます」

[マルクト] 松坂さとう : 「……帰って来ました」

[マルクト] マルクト : その笑みに、にこり。

[マルクト] 松坂さとう : そう言い、手の甲を見せ。

[マルクト] 松坂さとう : 令呪が消え失せているのを見せる。

[マルクト] マルクト : 「……なるほど」

[マルクト] 松坂さとう : 「……はい」

[マルクト] 松坂さとう : 「すみません、不甲斐ない同盟相手で」

[マルクト] マルクト : ……昨日の様子で大方そうではないか、と思っていたけれど。

[マルクト] マルクト : 「いえ、いいえ」

[マルクト] マルクト : その手を握る。

[マルクト] 松坂さとう : 「あ……」

[マルクト] マルクト : 「最初にこうやって、手を差し伸べてくれた」

[マルクト] マルクト : 「これほどありがたい”仲間”ですよ?」

[マルクト] 松坂さとう : 「……ふふ、ふふ……」

[マルクト] 松坂さとう : 「ええ、"仲間"……ですね」

[マルクト] マルクト : 「…はい、その通りです!」

[マルクト] 松坂さとう : もう、私には、無念も、後悔も無い。

[マルクト] 松坂さとう : ああ、なんて清々しい朝なんだろう。

[マルクト] 松坂さとう : 「……マルクトさん」

[マルクト] マルクト : 「……はい」

[マルクト] 松坂さとう : 「もう私に手伝えることは一切ありません、ですが……」

[マルクト] 松坂さとう : 「エールを、送らせてください」

[マルクト] マルクト : 「…それは……」

[マルクト] 松坂さとう : 「………この聖杯戦争、勝ち抜いてくださいね」

[マルクト] マルクト : 「とっても、心強いですね」

[マルクト] 松坂さとう : ニコ、と笑う。

[マルクト] 松坂さとう : 「ふふ」

[マルクト] マルクト : 「………はい、ええ」

[マルクト] マルクト : 「あなたの分まで、とは言いません」

[マルクト] マルクト :           ライフ
「あなたはもう、いい人生を送れそうですから」

[マルクト] 松坂さとう : 「──────────────」

[マルクト] 松坂さとう : 「……ええ、ええ」

[マルクト] 松坂さとう : 「もう、私も……叶っちゃいましたね」

[マルクト] 松坂さとう :

 ハッピーシュガーライフ
「"幸せで甘い日々"が」


[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト : ……ええ、ええ。

[マルクト] マルクト : 不安定だった私とはもう、お別れ。

[マルクト] マルクト : 今は立派に立つことが出来る。

[マルクト] マルクト : 支えてくれる人がいる。

[マルクト] マルクト : 支えると約束した人がいる。

[マルクト] マルクト : なら、それに恥じない──────

[マルクト] マルクト : ”真っ直ぐ立てる意志”を!

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト : 朝日が昇り、ぐるりと回る。

[マルクト] マルクト : 時刻は昼頃……そこは同市での喫茶店にてマルクトはお茶を飲んでいた。

[マルクト] マルクト : それは休息のためではなく、待ち人との約束のためであった。

[マルクト] マルクト : ……相手は一度同盟を結んだ際、全くと言っていいほど全貌が見えなかった黄猿という方。

[マルクト] マルクト : 近くにはアーチャーも霊体化して潜んでおり、襲撃されたとしても一応は大丈夫なはずだ、きっと。

[マルクト] 黄猿 : ちりん、ちりんと喫茶店のドアベルが鳴る。

[マルクト] マルクト : 「………!」

[マルクト] マルクト : 顔を上げ、そちらの方へと。

[マルクト] 黄猿 : 「…待たせちゃったねェ」

[マルクト] マルクト : 「いえいえ、今来たところですから」

[マルクト] マルクト : ことり、とコップを置いて。

[マルクト] 黄猿 : 長い足を組んで椅子に座る。
無礼なようだけどサイズが合わないから仕方ないねェ~~~~…

[マルクト] マルクト : 「…では、早速ですが……」

[マルクト] マルクト : 「あなたを呼んだのは二つ、理由があります」

[マルクト] マルクト : メモ帳を開き、それに目を落としながら。

[マルクト] 黄猿 : 「なんだい?」

[マルクト] 黄猿 : 覗き込む、とまではいかないけれど
顔を真正面に据えて

[マルクト] マルクト : 「…一つ目、ランサー陣営は強立場にいます。
同盟を離れた身ですが、今日はこちらの陣営ではなく、そちらを多使用していただきたいです」

[マルクト] 黄猿 : 真意を問うようにわっしは彼女を見る。

[マルクト] マルクト : その顔に、ぐい、と押されかけるが。
言い切って。

[マルクト] 黄猿 : 「…順当に考えれば
恐ろしい陣営ではあるねェ~~~」

[マルクト] マルクト : こくり、と頷き。

[マルクト] マルクト : 「…あのランサーのマスター……好敵手を探しているようでした、もしかしたらそちらの対処に手間取るかもしれません」

[マルクト] マルクト : 「そのため、あのランサーが倒れるまでお互い不干渉ということにしておきませんか?」

[マルクト] 黄猿 : 「……わっしは構わないけどねェ~~」

[マルクト] マルクト : ……同盟は切っている、いつでも戦いの火蓋は切って落とされてもおかしくない状況。
……言葉は慎重に選びたい。

[マルクト] マルクト : 「……ふむ」

[マルクト] 黄猿 : 「同盟相手の事もあるから
即断即決とは言えないねェ~~~」

[マルクト] 黄猿 : あくまでわっしは、という態度を崩さない。
言質を握らせるのは良くないからねェ…

[マルクト] マルクト : 「……わかりました、一応お耳に挟んでくれたようで何よりです」

[マルクト] マルクト : ……態度を一切崩していない…
これが……アサシンのマスター……

[マルクト] 黄猿 : 「…それで?もう一件のお話は?」

[マルクト] マルクト : …アサシン、正々堂々と戦うことが不得手なサーヴァントの持ち主が堂々と現れたことは、余裕の表れでもあるのだろう…

[マルクト] 黄猿 : 「わっしも気になっている事はあるけどねェ~~~~…
それを聞いてからにするよォ~~~」

[マルクト] マルクト : 「……これは陣営とは一切関係ない、個人的な興味です」

[マルクト] マルクト : 「……あなたは一体、何に向かって…この戦争を勝ち取ろうとしているのでしょうか」

[マルクト] マルクト : ……ミーシャさんは巻き込まれた、ギムさんは好敵手と戦うため、さとうさんは人生を勝ち取るため。

[マルクト] マルクト : では……この方は?

[マルクト] 黄猿 : 「…ふむ」

[マルクト] 黄猿 : 「それを聞いてェ…どうするつもりだい?」

[マルクト] マルクト : メモ帳をぱたん、と置いて。

[マルクト] マルクト : 「……どうもしません」

[マルクト] 黄猿 : 声の調子は変わらず。

[マルクト] マルクト : 「それで手を抜くこともしません。ですが……」

[マルクト] マルクト : 「……少なからず”戦争”をしている、その理由を知りたかったんです」

[マルクト] 黄猿 : 「……」

[マルクト] マルクト : ……そう、戦争。
私のように軽く見ていた訳でもなく、そうと知って身を投げ出したのであろうこの方は、一体。

[マルクト] 黄猿 : わっしの視線は、品定めをするように彼女を見聞する。

[マルクト] マルクト : その視線に臆することなく、見据えて。

[マルクト] 黄猿 : そこに。

[マルクト] マルクト : ……私は戦う内に、この戦争で立つ理由を見つけた。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『戦争というのは経済行為だという解釈があるが…それ以上の価値観を見出した結果がどうなるかは知っているかい?』

[マルクト] マルクト : 「…な、……あなたは」

[マルクト] 『不敗の青年』 : いつの間にか、軍服の青年が隣のテーブルに座っている。

[マルクト] マルクト : 「……いえ、わかりません」

[マルクト] マルクト : アサシン、そう言いかけて止める。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『ナショナリズム…主義…宗教…
イデオロギー闘争というのは歯止めを失わせるんだ』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『本来、怪我をしたり痛い思いをすればそこで戦と言うのは手打ちになるんだよ。
悔しい思いはしてもそれ以上にしようがないからね。』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『しかし…ここにイデオロギー、主張というものが組み合うと戦の範囲は拡大する。
民族が弾圧を跳ね返す為に、非道な相手を倒すために』

[マルクト] マルクト : 隣の彼を見ながら、話に耳を傾けて。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『それらは大抵、こういった想いが増幅させる。』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『死んでいった者達の為に…ってね』

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 実感が籠ったような、自嘲するような顔で。

[マルクト] マルクト : 「……死んでしまった方のために、戦争が続く悪循環…」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『生憎…僕は魔術師と言っても神秘性には特に疎いから、第二魔法だっけ?
死人の声は聞けないわけだけれど』

[マルクト] マルクト : 「……ふむ……」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『あくまで他者は他者、自分は自分だ。
何かの言い訳を使って自分を動かすような真似はあまり利口じゃないと思うね』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『我々には考える葦があるんだ。
あくまで冷静に、その上で何をする事がこの場において最善なのかを探るべきなんだろうね』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『まぁ、何百年も戦争を繰り返した民主主義国家の軍人が言えた事ではないけどね』

[マルクト] マルクト : 「…………」
英雄。それが語る歴史の重み、経験の重みはひしひしと伝わる。

[マルクト] マルクト : 「……では、問いますが…」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『ん?ああ…願いか…そうだったね…』

[マルクト] マルクト : 「……あなたにとっての、最善とは?」
戦争に妥協をしない、その訳は。

[マルクト] マルクト : こくりと頷き。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『そうだね…』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『私もわからない』

[マルクト] マルクト : 「……え」

[マルクト] マルクト : 「………ええっ!?」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 笑って言う。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『おいおい、待ってくれよ。
私だって一人の人間だよ?』

[マルクト] 黄猿 : 「……」

[マルクト] マルクト : 「…だからこそ、じゃないんですか!?」

[マルクト] マルクト : 人間であるなら、きっと願いの一つや二つ……と。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『何が最善かなんて、分かる訳ないさ。
それこそ聖盃に願わないと分からない物じゃないのかい?』

[マルクト] マルクト : 「……む、むう……」

[マルクト] マルクト : 確かに……物事にとっての最善なんて、その時その時で変わるかもしれないが……。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『最高を望むのであれば、自分より立派な誰かにずっと命令をして貰えばいい』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『魔術師とやらは聖盃に根源を求めるんだっけ?私は良く知らないけれど』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『でも、最高じゃなくっても人には欲しくてたまらなかったりするものもある。
私もね、つい紅茶にブランデーを入れる事を止められないんだ。』

[マルクト] マルクト : 「……まあ、そうですね」
根源という言葉に頷いて。
……私こそ、それを選択しようとしたわけではないが。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『誰かの最善が自分にとって最善ではない。
また自分の最善が、誰かの最善ではない。』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『だからこそ…最後まで対話と融和、それを崩さずにせめて皆で笑顔でいられるように。』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『ベストじゃなくてもベターが欲しい。
…そんなところかな?』

[マルクト] マルクト : 「…なるほど」

[マルクト] マルクト : 最善を尽くすことより、より良い物を、全員が納得するものを選択するというのはとても利口的で、賢い選択なのだろう。

[マルクト] マルクト : ああ、でも。

[マルクト] マルクト : 私はそこまで利口でもないみたいで。

[マルクト] マルクト : 「……私は違いますね」

[マルクト] マルクト : 「……最善を尽くせるなら、それを手に入れたい」

[マルクト] マルクト : 真剣な眼で、じっと彼を見つめて。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『……』

[マルクト] マルクト : 「……きっとそれが、誰かの最善ではないのでしょう」

[マルクト] マルクト : 「でも、私は……私一人だけで今ここに立てているわけではありませんから」

[マルクト] マルクト : ……ミーシャ、さとうの顔を思い出す。

[マルクト] マルクト : 「……私にとってのベストが、誰かのベストになれたってこともまた、知ってます」

[マルクト] マルクト : にこりと笑う。
……少し、おこがましいかもしれないけど。

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『うん』
肯定するでもなく、ただ受け止める。

[マルクト] マルクト : 「……」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『じゃあ…私から最後に一つだけ』

[マルクト] 黄猿 : 「………」

[マルクト] マルクト : 「……ええ、なんなりと」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『誰かを想える心があるのなら、ちょっとだけ枠を広げて』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『その外にいる人も見えるように心がけて欲しい』

[マルクト] マルクト : 「……外、ですか」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『……勿論、これは必須じゃないけどね』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『でも、願いを叶える責を負った以上は。
色々な物を見て…聞いて…』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『その上で自分が願いを叶えてよかったのだと』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『そう思えたら…救いになるんじゃないかな』

[マルクト] マルクト : 責……。
ただ叶える、というものでは……ないのですね。

[マルクト] マルクト : 「……では」

[マルクト] マルクト : 「…今日、あなたという”外”を知れたわけですね」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『はは、君に出会えて私も嬉しいよ』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 年齢に見合わない屈託のない笑顔で答える

[マルクト] マルクト : 「……ええ、こちらとも」
警戒が解けた表れか、先ほどよりも笑顔でそれに応える。

[マルクト] マルクト : 「…私は…見聞を深めたいと思います
だからこそ、あなた方に会いに来れたのですから」

[マルクト] マルクト : 「……あらためて、ありがとうございました」

[マルクト] マルクト : そうして、ぺこりと頭を下げて。

[マルクト] マルクト : 「ですが、変わらず…私の最善、尽くしますよ!」

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『ああ、こちらこそありがとう』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『お身体に気を付けて…
なんて、戦争の場で言うのも変だけれど』

[マルクト] マルクト : 「ふふ、あなたも結構……優しい方ですね」

[マルクト] マルクト : 他人のサーヴァントと話すことは今までなかった。
……だからちょっと、意外だと思いながらも。

[マルクト] マルクト : そうして、メモ帳を拾い席を立つ。

[マルクト] アーチャー : ふわり、霊体化したアーチャーもそれに伴い。
互いとも、その場を離れていった。

[マルクト] 『不敗の青年』 : カップから手を放し、手を振って応える

[マルクト] 黄猿 : 「……」

[マルクト] 黄猿 : 「人は必ずしも、賢しくいられるもんじゃないって訳だねェ…」

[マルクト] 黄猿 : 薄く笑いを浮かべながら、英霊の方を向いた

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『ああ、でも』

[マルクト] 『不敗の青年』 : 『私自身としては…嫌いじゃなかったかな』

[マルクト] 黄猿 :  

[マルクト] 黄猿 :  

[マルクト] 黄猿 :  

[マルクト] マルクト : ……そこは日が照らされる、どこかの空き地。

[マルクト] マルクト : そこに。

[マルクト] アーチャー : 炎が現れる。

[マルクト] アーチャー : そして纏っていた燃ゆるものが消えた時、そこには二人の少女がいた。

[マルクト] アーチャー : 「いやー、やっぱ強いねあの人!とっておきのとっておき使っちゃったよ」

[マルクト] アーチャー : たはは、と朗らかに笑う。

[マルクト] マルクト : 「…凄まじかったです…あれは」

[マルクト] マルクト : ……この私よりも下に見える少女。

[マルクト] マルクト : 彼女が出した、あの絢爛とした金のモノはランサーの槍をしのいでみせた。

[マルクト] マルクト : …だが、なぜ彼女は一体……

[マルクト] マルクト : 「……ですが、あの豚のような物はなんなのですか?そして…なぜ、英霊に」

[マルクト] マルクト : …見聞を深めるためにも。

[マルクト] アーチャー : 「……ほよ?私?」

[マルクト] アーチャー : ううん、と唸りこんで。

[マルクト] アーチャー : 「……私はねー、生涯掛けて”ナニカ”をさいっきょーにしようと思ってたんだ」

[マルクト] アーチャー : 「それこそ、全ての頂点に立とうってね」

[マルクト] マルクト : 「…頂点」

[マルクト] アーチャー : そ、と頷いて。

[マルクト] アーチャー : 「でもそれが今の身じゃ思い出せない」

[マルクト] アーチャー : 「体の中に湧き上がるのは、頂点に立とうとする意志だけ」

[マルクト] アーチャー : 「生前のその意志が、認められて今ここにいるんじゃないかなって!」

[マルクト] マルクト : 「……それがあなたの…なすべきことなのですか」

[マルクト] アーチャー : 「うん、そのために私は天辺を取る」

[マルクト] アーチャー : 「あなたも一緒!」

[マルクト] アーチャー : そうして手を強引にとって。

[マルクト] マルクト : 「わ、私も……?!」

[マルクト] マルクト : ぶんぶんと振り回されている。

[マルクト] アーチャー : 「そう、あなたはこの戦争を勝ち取るって決めたんでしょ」

[マルクト] アーチャー : 「なら、同じだよ!」

[マルクト] アーチャー : 「私たちで……任されたもの、全部ひっくるめて…」

[マルクト] アーチャー :
  偉業を成し遂げよう
 「最強になっちゃおう」
 

[マルクト] マルクト : 「……最強ですか、あはは…」

[マルクト] マルクト : 突飛…というか、私的には…自身が無い。
それを目指そうとする経験なんて、今までわからなかった。

[マルクト] マルクト : ……ただ、そう。

[マルクト] マルクト : …やるって決めたんだから、やってやる。

[マルクト] マルクト : 「……いいですよ」

[マルクト] マルクト : 手を握り返す、熱く、強く。

[マルクト] マルクト : 「最強、なっちゃいましょう」

[マルクト] マルクト : にこり、と笑って。

[マルクト] アーチャー : 「へっへへん!」

[マルクト] アーチャー : にやり、と笑って。

[マルクト] マルクト : 「それでは…行きましょう、私たちが勝ち残るために」

[マルクト] マルクト : そのまま、歩を──────

[マルクト] マルクト : 日へと歩き出すように。

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] アーチャー : 炎は揺らめく、揺らめいて。

[マルクト] アーチャー : けれど、いつかは……

[マルクト] アーチャー : 消えてゆくもの。

[マルクト] アーチャー :  

[マルクト] アーチャー :  

[マルクト] アーチャー :  

[マルクト] マルクト : 「………アーチャー」

[マルクト] マルクト : そこはマルクトの集合地、そこに2人しかいない。

[マルクト] マルクト : 「……先ほどの戦い、あれは……」

[マルクト] マルクト : 「……凄まじい物でした、とても」

[マルクト] マルクト : 「……ですが、無理をしましたね」

[マルクト] アーチャー : 「……あはは~……そりゃ、隠し玉だからね」

[マルクト] アーチャー : えへへ、と笑う。

[マルクト] アーチャー : しかし、その炎が揺らいで……まとまっていない。

[マルクト] アーチャー : ……それはつまり、別れの刻が近いという事。

[マルクト] マルクト : 「……アーチャー……」

[マルクト] マルクト : 「…私は、私は………どうすれば」

[マルクト] マルクト : 「わかんないよ……」

[マルクト] マルクト : 顔を手で塞いで、背中を壁へと預ける。

[マルクト] アーチャー : 「………」

[マルクト] アーチャー : 「………ちゃー!」

[マルクト] アーチャー : ごつん。

[マルクト] アーチャー : 頭突きをマルクトに食らわせる。

[マルクト] マルクト : 「あぐうっ!?」

[マルクト] マルクト : 手を下ろし、アーチャーを見つめる。

[マルクト] マルクト : 「……何するんですかぁ!」

[マルクト] アーチャー : 「全くもう!」

[マルクト] アーチャー : 「……最強を目指すと誓ったんだから、こんな所でくじけてらんないでしょ」

[マルクト] アーチャー : 「ね?」

[マルクト] アーチャー : にこりと、笑う。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] マルクト : ひりりとした額がを抑えて。

[マルクト] マルクト : 「……私、あなたみたいに…目指せますかね」

[マルクト] アーチャー : 「んーーーーー」

[マルクト] アーチャー : 「あなたはどうやって、ここまで来たの?」

[マルクト] マルクト : 「……それは」

[マルクト] マルクト : ……さとうさんに”仲間”として助けてもらい。

[マルクト] マルクト : ……ミーシャさんを、”支える”と約束して。

[マルクト] マルクト : ……アサシンから、”最善”を取るべきと言われ。

[マルクト] マルクト : ……ランサーの、最強に圧倒されながらも。

[マルクト] ランサー : 足音。

[マルクト] マルクト : 「………!」

[マルクト] マルクト : 振り返る。

[マルクト] アーチャー : 「……来てくれたね」

[マルクト] ランサー : 「…その体たらくはなんだ。
 再戦はしっかり申し込んだはずだ」

[マルクト] アーチャー : その体は粒子となり、徐々に薄まっている。

[マルクト] アーチャー : 「…あっはは。ごめんね!再戦は…できそうにないかな」

[マルクト] ランサー : 「出来もしない約束など……!
 ハナからするものじゃあない!!」

[マルクト] マルクト : 「……ランサー、さん…」

[マルクト] ランサー : 「貴様ァ、俺の信頼を、踏み躙るか、弓兵ェ!」

[マルクト] アーチャー : 「……や、本当にごめんね、でもね」

[マルクト] アーチャー : 「信頼次いでに、頼まれごと……してもいいかな?」

[マルクト] ランサー : 「……無論だ!!
 騎士は…民から頼まれたことを断りはしない!!!」

[マルクト] アーチャー : 「リベンジは出来そうにない、けど……」

[マルクト] ランサー : 「それが、義務だから!」

[マルクト] アーチャー : 「まだまだ、あなたの戦いの場は残されてるみたいだからさ」

[マルクト] アーチャー : 「……いやあ、ほんと……」

[マルクト] アーチャー : 「いい騎士さんだよ」
その返事をきいて、うんうんと頷く。

[マルクト] ランサー : 「ク…」

[マルクト] ランサー : 「俺は…」
思い出す。あの時を。
俺は、二度も主人を守れなかった。

[マルクト] ランサー : 「俺は…ああそうだ、良い騎士にならなければ、そうして戻らなければ…ならないんだ……」

[マルクト] アーチャー : 「…………」

[マルクト] アーチャー : より良い自分であろうとする、その意志。
……それはきっと、彼と私とでは同じだ。

[マルクト] アーチャー : 「……なら、なってみせて」

[マルクト] アーチャー : 「この戦いで最強になってみせて」

[マルクト] ランサー : 「……」

[マルクト] アーチャー : 「それで……もし、あなたが最強になれたなら」

[マルクト] アーチャー : にかっと笑う。

[マルクト] アーチャー : 「……リベンジ、受けてあげるよ!」

[マルクト] ランサー : 「…その言葉、しかと記憶した!!!」

[マルクト] アーチャー : へへ、と笑い。

[マルクト] マルクト : 「……あなたは、いいんですか…?」

[マルクト] ランサー : 「…?」

[マルクト] マルクト : 「……私は、一人じゃ…どうしようも出来ないマスターです」

[マルクト] 松坂さとう : カツ、カツ、カツ、カツ。

[マルクト] 松坂さとう : 靴音が、鳴る。

[マルクト] ランサー : 「……」

[マルクト] 松坂さとう : 「─────どうしようもできない?」

[マルクト] マルクト : ……そう、誰かが隣にいないと……

[マルクト] マルクト : 「……」

[マルクト] マルクト : 「さとう、さん…」

[マルクト] 松坂さとう : 「それ、どの口が言ってるんですか?」
影が差し込む。徐々に、その顔が明らかに。

[マルクト] 松坂さとう : 月夜に照らされたその表情は、冷たく。

[マルクト] 松坂さとう : 「…………貴女は、私に教えてくれましたよね」

[マルクト] 松坂さとう : 「"信じるということ"を」

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] 松坂さとう : 「それって、1人では"どうしようも出来ない"方が言える台詞ですか?」

[マルクト] マルクト : 「ですが……私がここまで来てくれたのは、誰かの助けがあって……」

[マルクト] 松坂さとう : 首を横に振る。

[マルクト] マルクト : 「……信じる、なんて…誰にだってできます」

[マルクト] 松坂さとう : 「────何を言うかと思えば……」

[マルクト] ランサー : 【できなかった人間を、お前は知っているはずだ】

[マルクト] マルクト : 「………ッ」

[マルクト] ランサー : 【お前が知らなくとも、きっとお前の中の何かは】

[マルクト] 松坂さとう : はぁ。と溜息を一つ。
「……そんな信念で、私の願いを袖にしたんですか?」

[マルクト] 松坂さとう : 「ねぇ、マルクトさん」

[マルクト] 松坂さとう : 「誰が」

[マルクト] 松坂さとう : 「私を変えたんですか?」

[マルクト] 松坂さとう : 「こんな、"苦い"塊の人間を、汚い人間を」

[マルクト] 松坂さとう : 「誰が変えてくれたんですか?」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトの目を、ジッと見る。

[マルクト] 松坂さとう : そして、優しく、微笑む。

[マルクト] マルクト : 「────────────」

[マルクト] 松坂さとう : 「───────貴女、ですよ」

[マルクト] マルクト : ああ、そうだ……私は。

[マルクト] マルクト : ……自分が、成そうとしていた、その物も揺らいでしまっていたんだ。

[マルクト] マルクト : 「……はい」

[マルクト] 松坂さとう : 「────掴み取ってください、マルクトさん」

[マルクト] ランサー : 「…ん、俺なんか言ったか?」

[マルクト] マルクト : 「……私は、あなたが、あなた達から貰ったものをすっかり、忘れそうになっていました」

[マルクト] 松坂さとう : 「さぁ?」
ランサーを見て、肩をすくめる。

[マルクト] ランサー : 「……」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトに、ニコ、と笑う。

[マルクト] マルクト : 「……さとうさん、ランサー……」

[マルクト] ランサー : 「それにな!!!
 俺からも言いたいことがある!!!」

[マルクト] マルクト : 「……こんな私だなんて、言いません」

[マルクト] マルクト : 「………な、う、はい!」

[マルクト] マルクト : 圧に臆され、顔を向ける。

[マルクト] ランサー : 「一人じゃ何もできないというのなら……
 俺も同じだッ!!!」

[マルクト] ランサー : 「俺は機械だ、兵器だ、人形だ、着ぐるみだ!」

[マルクト] ランサー : 「使ってくれる人間がいないなら、俺は動けやしない!!!」

[マルクト] マルクト : 「……あなたほどの、力を持つ物でも…?」

[マルクト] ランサー : 「そうだ。
 俺はモビルスーツ。ガンダム・フレーム」

[マルクト] ランサー : 「天使を狩るために造られた悪魔で……」

[マルクト] ランサー : 「人が扱う、一つの機械だ」

[マルクト] マルクト : 「………人が、扱う」

[マルクト] マルクト : ……そうだ、ランサーのマスター……ギンさん。
あの人との連携により、あの力を示していたのであるなら、それは。

[マルクト] ランサー : 【お前の知る“機械”とは、その点で違うと言えるかもしれないし、違わないかもしれない】

[マルクト] 松坂さとう : 「ええ、つまり─────」

[マルクト] マルクト : ………。

[マルクト] 松坂さとう : 「────信じる力ですよ」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトの目を、見て。

[マルクト] マルクト : ……機械、機械。

[マルクト] : 「業務は私で十分。あなた達の存在は、本来必要が無いの」

[マルクト] マルクト : ……朧げな青髪を幻視する。

[マルクト] マルクト : ああでも。

[マルクト] マルクト : さとうの目を見返して。

[マルクト] マルクト : そして、ランサーに頷く。

[マルクト] ランサー : 「……」

[マルクト] マルクト : この二人は、決して違う。

[マルクト] マルクト : そして私も。

[マルクト] マルクト : 「……私は、私たちは…お互いを信じて、手を取り合って…」

[マルクト] マルクト : 「実力を、示すことが出来るんですね」

[マルクト] ランサー : 「……ああ」

[マルクト] 松坂さとう : 「それ、世間で何て言うか知ってます?」

[マルクト] 松坂さとう : 「────"絆"って言うんですって」

[マルクト] 松坂さとう : 悪戯っぽく笑う。

[マルクト] アーチャー : ふふん、と満足そうにその様子を眺めている。

[マルクト] マルクト : 「……絆、うん……」

[マルクト] マルクト : 「いい響きですね」

[マルクト] ランサー : 「サーヴァント・ランサー。ガンダム・キマリストルーパー。望むならばマル【エ】ク【リ】ト嬢の力となろう」

[マルクト] マルクト : 「……ええ、こちらこそ…」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトと、サーヴァントを見て、満足気に頷く。

[マルクト] マルクト : 「よろしくお願いします、キマリストルーパーさん」

[マルクト] 松坂さとう : そして、アーチャーを見て。

[マルクト] 松坂さとう : 「───お疲れ様でした、貴女も勇敢な戦士でしたよ」

[マルクト] アーチャー : 手を振る。
もっとも、その手の末端は消えかけている。

[マルクト] 松坂さとう : ニコ、と笑い、手を振り返す。

[マルクト] アーチャー : 「……あはは~、道半ばだけどさ」

[マルクト] アーチャー : 「最強にしてあげてね、その子」

[マルクト] ランサー : 「……次こそは約束を守ってもらう」

[マルクト] アーチャー : ぴしっとマルクトを指しつつ。

[マルクト] アーチャー : 「うん、破るのは……偉大じゃなくなっちゃう!」

[マルクト] アーチャー : にこりと笑い、そうして。

[マルクト] アーチャー : ……炎が揺らめくように。

[マルクト] アーチャー : 「じゃあね、マスター!」

[マルクト] ランサー : 「由比鶴乃嬢ッ!!
 また、会おう!!!」

[マルクト] アーチャー : 「そして、勇敢な騎士さん!」

[マルクト] アーチャー : 掻き消えた。

[マルクト] 松坂さとう : 見届ける、その最期を。

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] ランサー : その時キマリスが無意識に取っていたのは、敬礼のポーズだった

[マルクト] マルクト : メモ帳を、硬く硬く握りしめて。

[マルクト] 松坂さとう : 「────さて……」
その場で、両手を叩く。

[マルクト] 松坂さとう :  

[マルクト] 松坂さとう : 「………私がここへ来た理由は、マルクトさんを励ますため……だけではありませんよ」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトの目をじっと見る。

[マルクト] マルクト : 「………ッ」

[マルクト] 松坂さとう : 「────イレギュラーの存在を確認しました」

[マルクト] マルクト : 雰囲気が、変わったのを感じ取る。

[マルクト] 松坂さとう : 「……"アヴェンジャー"」

[マルクト] 松坂さとう : 「そう言うらしいです」

[マルクト] マルクト : 「……”アヴェンジャー”……?」

[マルクト] ランサー : 「…アヴェンジャー!?」

[マルクト] 松坂さとう : マルクトとランサーに頷く。

[マルクト] 松坂さとう : 「……私も詳細は分かりません」

[マルクト] 松坂さとう : 「ただ……ライダー陣営へ接触」

[マルクト] マルクト : 慌ててメモ帳をめくる、が……”イレギュラー”。
データには一切なく。

[マルクト] ランサー : 「復讐者のクラスか……
 あるいは…俺にピッタリだったかもしれんな」

[マルクト] 松坂さとう : 「何をしたかは不明ではありますが………ミーシャさんの顔色が、変わっておりました、とても、冷たく」

[マルクト] マルクト : 「………ミーシャさん」

[マルクト] 松坂さとう : 「─────マルクトさん、ランサーさん、お気をつけて」

[マルクト] 松坂さとう : 踵を返し。闇夜へ消える。

[マルクト] ランサー : 「その忠告を感謝する!」

[マルクト] マルクト : 「……はい、受け取りました」

[マルクト] マルクト : 「……ですが、必ず……」

[マルクト] マルクト : 「勝ち取ってみせますよ」

[マルクト] マルクト : その背に、投げかけて。

[マルクト] 松坂さとう : ─────ええ、勝ち残ってください。

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] X :

[マルクト] X : 【承認。だが、信頼できても信用は出来んな】

[マルクト] X : 【だが…あるいは】

[マルクト] X : XXXXXXXXXXXX

[マルクト] アルターエゴ : 戦いの後。
アルターエゴ、ガンダム・ヴィダールは月を見上げていた。

[マルクト] マルクト : 「……何か思い入れでも?」

[マルクト] アルターエゴ : 「……クク」

[マルクト] マルクト : 抱えられたまま、同じように月を見つめて。

[マルクト] アルターエゴ : そこから、決壊したように笑い出して
「ハーーーッハッハッハッ!!!」

[マルクト] マルクト : 「………うおおおお!?」

[マルクト] マルクト : その声にびっくり、というように。

[マルクト] アルターエゴ : 「勝てる……勝てるぞ、この力ならば!!!
 もう二度と我が主人に恥はかかせない!!!」

[マルクト] アルターエゴ : 振り上げた拳を握りしめ
「……待っていろ、マクギリス・ファリド!!!」

[マルクト] マルクト : 「…アルターエゴ……」

[マルクト] アルターエゴ : 「……ん、ああ、すまない。見苦しいところを見せた」

[マルクト] マルクト : 「……あなた随分……変わりましたね」

[マルクト] アルターエゴ : 「変わった…か」

[マルクト] マルクト : ……じっと、その顔らしき部分を見て。

[マルクト] アルターエゴ : 「買い被られては困る…俺もまた、ここに来た理由は、元を辿れば復讐なのだから」

[マルクト] マルクト : 「……先ほど言っていた…」

[マルクト] マルクト : マクギリス、という名。
聞いたことはないが、それが恐らく…このアルターエゴの。

[マルクト] アルターエゴ : 「…ああ。
 あの時の屈辱も、敗北も忘れたことはない
 主人に敗北を与えてしまったあの時……!」

[マルクト] マルクト : 「……敗北」

[マルクト] マルクト : 「それが…あなたの”側面”というわけですか」

[マルクト] アルターエゴ : 「キマリストルーパーとしての俺は、ここに来るまでに一度負けた。
 ヴァルキュリアフレーム・グリムゲルデに……
 ……そして、マクギリス・ファリドに」

[マルクト] マルクト : 一度破れ、その復讐を果たさんとするその力……。
実に自己を押し通さんとする、圧倒的な圧力。

[マルクト] マルクト : 「…ふむ」

[マルクト] アルターエゴ : 「故に俺は、あの男の存在に引っ付いてここまで来た。強い者と戦い、強くなり、いつかまた本当の主人に使ってもらえる時、今度こそ勝利の栄光を与える為に」

[マルクト] マルクト : その言葉を聞いて、月をもう一度見上げる。

[マルクト] マルクト : 「では、その栄光は…与えられそうですね」

[マルクト] マルクト : 「…なにせ、あそこまで華々しい勝利でしたから」

[マルクト] アルターエゴ : 「はは、そうだな」

「きっと俺がここから消える時、その望みは叶う」

[マルクト] アルターエゴ : 「その時は……お前の願いも叶っていると……」

[マルクト] マルクト : 「……叶いますよ、絶対!」

[マルクト] マルクト : 「アーチャーの意志を継いで、最強になるのだと」
「あなたとならば、私たちの力を示して……」

[マルクト] マルクト : そして、私が私であれるように、この戦場で立ち続ける。

[マルクト] アルターエゴ : 「……ああ。そうする必要があると見た!」

[マルクト] マルクト : 「ええ、これも……”約束”です」

[マルクト] マルクト : それを示すために、拳を突き出して。

[マルクト] アルターエゴ : それを見た人形は、ゆっくりとそれに拳を突き合わせた。

[マルクト] マルクト : それにふふ、と微笑み。

[マルクト] マルクト : 「えーっと、申し出が一つ」

[マルクト] アルターエゴ : 「…む?」

[マルクト] マルクト : 「……帰り道、このまま運んでくれませんか?」

[マルクト] マルクト : 初めての令呪、その代償として体のだるみが抜けきっておらず。

[マルクト] アルターエゴ : 「……世話の焼ける主人に縁があるようだ、俺は」

[マルクト] マルクト : 「そ、それくらい信用してると言ってください!」

[マルクト] アルターエゴ : 「ははは、そうかもな」
全身の噴射口から青い炎を発して、跳躍する
「さ、飛ばしていくぞ!」

[マルクト] マルクト : 「…ん、わわっと……!」

[マルクト] マルクト : 風で髪が揺れ、必死にその巨体へとしがみつき。

[マルクト] アルターエゴ : その巨体は、月夜の中へと消えていった…

[マルクト] ピノ :  

[マルクト] ピノ :  

[マルクト] ピノ : 手紙が放り込まれる、やけに粗雑な字で書かれた手紙が。

[マルクト] ピノ : 「お友達を『招待』した」

[マルクト] ピノ : 「楽しもうぜ」

[マルクト] ピノ : 「なんつって」

[マルクト] ピノ :  

[マルクト] ピノ :  

[マルクト] マルクト : 「──────」

[マルクト] マルクト : 帰り道。

[マルクト] マルクト : そう、照らされていたはずの道だ。

[マルクト] マルクト : ……しかし今は何処までも、どこまでも……

[マルクト] マルクト : 暗い。

[マルクト] マルクト : 「………これは」

[マルクト] マルクト : これが指すのは、一つしかない。

[マルクト] マルクト : ………。

[マルクト] マルクト : 「………いますか、アルターエゴ……」

[マルクト] マルクト : ぐしゃり、とその紙を握りつぶす。

[マルクト] アルターエゴ : 「……見ていたさ」

[マルクト] マルクト : 「………どうして、こうなんでしょうね…」

[マルクト] マルクト : 「戦争は……」

[マルクト] アルターエゴ : 「……戦争か」

[マルクト] アルターエゴ : 思い返すは、機械の天使達を狩るためだけにひたすらに力を振るったあの戦い。

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] アルターエゴ : きっと、俺が、キマリスが経験した、最初で最後の戦争。

[マルクト] マルクト : 「…あなたは…見てきたのでしたね」

[マルクト] アルターエゴ : 「……」

[マルクト] マルクト : 「……その戦場もまた、同じでしたか?」

[マルクト] アルターエゴ : 「どうだろうな」

「……もう、300年も前の話だから」

[マルクト] マルクト : このような、卑劣で殺し合う。
この場。このところ。

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] アルターエゴ : 「だがあの戦いには仲間がいた……
 誇りがあった。大義があった。
 そして何より、敵はヒトではなかった」

[マルクト] マルクト : 「…こことは、違いますね」

[マルクト] マルクト : 「……相手が人であれば、こんな思いもすることがなかったのでしょうか」

[マルクト] アルターエゴ : 「俺が、ヒトと戦ったのは、そうだ。
 戦争と形容すべき舞台ではなかった」

[マルクト] マルクト : ……友と呼べる、彼女が……私の浅慮で見過ごすことは…

[マルクト] アルターエゴ : 「今思い返せば、あの時、ただ単に、生きたいと願う子供達と、俺は……」
顔を上げる
「……どうする?お前がアレを放っておくとも思えん」

[マルクト] マルクト : 「………」

[マルクト] マルクト : その顔を見合わせて。

[マルクト] マルクト : 「私は……戦略も何も考えてないマスターです」

[マルクト] マルクト : 「”ランサー”のマスターよりも、きっと劣るでしょう」

[マルクト] マルクト : 「ですが」

[マルクト] マルクト : 「……”アルターエゴ”のマスターとして、勝利を勝ち取るだけです」

[マルクト] アルターエゴ : 「……」

[マルクト] X : XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

[マルクト] アルターエゴ : 【忘れるな。エ【】】】【】

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] アルターエゴ : 【今話しているのは、ガンダムヴィダールではない】

【お節介な、負の遺物の思念だ】

[マルクト] マルクト : ……そうですか。

[マルクト] アルターエゴ : 【……だが、聞いておけ】

[マルクト] マルクト : ………私の”真名”を知っているのは。

[マルクト] マルクト : ……。

[マルクト] アルターエゴ : 【飲まれるな。しっかりとした理性を持て】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『分別する理性』

[マルクト] アルターエゴ : 【希望は決して忘れるな。捨てればそれは諦めに繋がる】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『もっといい存在になれるという希望』

[マルクト] アルターエゴ : 【生を恐れるな。死を受け入れることは救済ではない】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『生き続けるという勇気』

[マルクト] アルターエゴ : 【今日は明日より悪くはない。期待は何処かに秘めておけ】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『存在意味に対する期待』

[マルクト] アルターエゴ : 【失うことを恐れるな。かえって守れるものも守れない】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『守り抜く勇気』

[マルクト] アルターエゴ : 【信頼するものは選べ。だが、本当に信じられるものがあるなら】

[マルクト] マルクト : ……どこかで聞いた言葉。
『快く信じ任せられる相手』

[マルクト] アルターエゴ : 【恐怖というものは、目を逸らせば迫ってくる。ならば】

[マルクト] マルクト : ………。
『鎖を断ち切り、恐怖と向き合う瞳』

[マルクト] アルターエゴ : 【過去を変えられぬのなら、それを受け入れた先には】

[マルクト] マルクト : 『過去を受け入れ、未来を作り出す瞳』

[マルクト] アルターエゴ : 【君に、光を】

[マルクト] マルクト : …………。

[マルクト] アルターエゴ : 【随分とお節介をした。……それでは、黒歴史を頼んだ】

[マルクト] X : XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX

[マルクト] マルクト : 「…………」

[マルクト] アルターエゴ : 「……俺は、今、何を」

[マルクト] マルクト : 【きっと、その光に向かって立ち続けられる】
『真っ直ぐ立てる意志』

[マルクト] マルクト : 「……なんでしょうね、でも」

[マルクト] アルターエゴ : 「……」

[マルクト] マルクト : 「……悪くありませんでした」

[マルクト] アルターエゴ : 「そうだな……じゃあ俺からも一つ……」

[マルクト] マルクト : 「……はい」

[マルクト] マルクト : 向き合って。

[マルクト] アルターエゴ : 「この戦いが終わったら……
 俺は……」

[マルクト] アルターエゴ : 「『生きて』……みたいな」

[マルクト] マルクト : 「……」

[マルクト] マルクト : 「………それは……」

[マルクト] マルクト : 「とてもいいことだと思います」

[マルクト] アルターエゴ : 「……機械が生きるって、おかしいかな」

[マルクト] マルクト : にこり、と……笑いかけて。

[マルクト] マルクト : 「いいえ、全く」

[マルクト] マルクト : 「あなたなら、生きていけるでしょう」

[マルクト] アルターエゴ : 「……そう、か」

[マルクト] マルクト : 機械であろうとも、人間になったとしても。

[マルクト] マルクト : 「そうですよ、では向かいましょう」

[マルクト] マルクト : 足を進めて。

[マルクト] アルターエゴ : 「ああ、信じよう!」

[マルクト] マルクト : 「恐怖と向き合い、未来を作るために!」

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] マルクト :  

[マルクト] : 光の種が落ちる。

[マルクト] : 別れと出会って来た少女の元に。

[マルクト] : ……『真っ直ぐ立てる意志』、そのエゴを貫くために。

[マルクト] :  

[マルクト] :  

[マルクト] :